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名前しか知らない異母妹は、ニールの出自を知らされていないはずだ。
名前を知ってはいても、それは皇族ではなく、ティアニー姓をもった帝国の英雄ニールとしてだ。
軍の内部でも、ニールが皇子であったことを知っているのは上層部だけだった。知っている者は、知っている。それくらいの、程度でしかない。
皇族に連なる血筋に現れる瞳の光彩に混じる金糸も、色濃く表れていた左目はつぶされていた。右目にも金糸はのこっているが、よく見なければわからないし、英雄の目を間近で覗き込むような物好きはそうそういない。
「どんな顔をして、会えばいいんだかなぁ」
ニールは兵舎から出て、城へと続く石畳を歩いていた。
エリシア皇女のレディヘイム視察公務は、明日、帝都を出発する予定になっている。馬車でゆらゆらと揺られ、二日の旅路となる。
ニールは単独で一足先に帝都を出立し、帝都郊外にあるモーリエスという街で、視察団と合流する手はずになっている。
ヴァレリーから渡された封書に入っていた指令書には合流の手筈と、エリシア皇女に顔合わせをするよう、面会の場所と時間が記されていた。
「皇族との面会となると、城の奥まで入ることになるんだよな」
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