皇帝の血 6

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 遠征から戻り、戦勝報告をするために城に入ったが、皇族ではなく階級も少佐であるため、奥まで立ち入る権限はない。  エリシア皇女との会合の場に指定されたサロンは武装した衛兵が常に立っている扉の向こう側にある。  招待状を持参していなければ、殺されても致し方ない場所だ。 「……しかし、相変わらず帝都は平和だな」  国家の主が住まう城の周辺なのに、のんびりとした雰囲気が広がっている。  帝国の領地外で戦うニールからすれば、平々凡々とした空気は、むしろ異国のようにも感じられた。 「鍛錬はしているが、こうも平和続きだと、さすがに勘が鈍っちまいそうだ。まさか、平和ボケをさせておいてから、戦地に送ろうって算段じゃあないだろうな」  帝都に寝泊まりをするようになってから、そろそろ一ヶ月になる。  戦況は一応の終息をみせており、ヴァルラム帝の体調の話が本当であるのなら、侵略行為はしばらくないだろう。  暇人め、とヴァレリーは揶揄してきたが、怒るに怒れない状況ではある。 「戦場でしか力を振るえないなんて、とんだポンコツ英雄だよな」  思ってもみなかった時間の猶予が出来たおかげか、ニールは今までちっとも感じていなかった肩の重さに気付いて顔をしかめた。  戦場で行方をくらませた兄、アルファルド。     
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