皇帝の血 6

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 戦死として取り扱われてから八年の月日が経ち、エフレムからの情報で現在もなお、どこかで生きていると分かった。  生きていること以外、どこにいるのかまでは分からない。  エフレムは、知っているのかいないのかわからないが、これ以上の追跡を良しと考えていないようだった。  誤魔化されているような気がしてならないのは、ただの大佐軍人であるはずなのに、ニール以上に母であるアマリエを知っているからだろう。  皇妃である母とただの大佐軍人でしかないエフレムとの間に何があったのか。  ゆっくりとした帝都での日々は、いままでは触れることさえかなわなかった物事を、普通に考える余地をニールに授けてくれた。 「……ったく、どこに行ったんだ、あの変態オヤジの野郎は。休暇が伸びそうだからって、無限じゃねぇんだぞ」  情報提示の報酬として、体の関係を要求されたときには面食らった。  ニール自身に男色の気はないが、男所帯の軍に所属しているせいか、そういった話しはよく聞くし、誘われることも幾度かあった。 「ほんと、何が起こるか人生ってのはわかんねぇもんだよな」  達観するようつぶやいて、ニールは下腹部をさすった。  男からの寝所への誘いは、ことあるごとにやんわりと、時には腕力で退けていたニールも、今はもう処女ではない。     
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