皇帝の血 6

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 背に腹はかえられなかったとはいえ、高をくくっていたのはある。  絶対に感じないと、十七も年の離れた相手の手管に落ちるとは、少しも思ってはいなかった。 「あぁ、もう! やめだ、やめだ!」 「やんごとなきお方に会うんですから、髪くらいは綺麗にしておいたほうが良いんではないですかぁ?」  木製の、重そうな扉をくぐり城内に足を踏みいれた直後、どこかで聞いた覚えのある軽薄な声に、ニールは足を止めた。 「お久しぶりです、ニール・ティアニー少佐。僕は、セヴィー・ハーグマン。覚えていますかね?」  にっこりと、細い目をさらに細くして穏やかに微笑んでいるくせに、どこか胡散臭さが払拭できない、ある意味特徴的な顔。  長い前髪に、そばかす。ひょろっとしているが、弱々しくはない体躯。 「ああ、覚えている。人の部屋に不法侵入してきた、胡散臭い諜報部の人間だったな」 「胡散臭くて当たり前なのが諜報部ですけど、僕も少佐も同じ帝国軍人ですし、仲良くしましょうよ。せめて、任務に支障ない程度には」  セヴィーが言うように、同じ帝国軍人。  仲間、とまではいかなくとも敵ではない……ともいえない。     
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