皇帝の血 6

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 ニールの感じている胡散臭さは、セヴィーが諜報部だからというわけではない。直感的な部分で、ひと目見たときから油断してはならない相手と感じていた。 「どうして、お前がいるんだ?」 「どうしてもなにも、同じ任務だからですよ。表だってはは少佐が、裏では僕が皇女様の御身を守る手筈となっているんです」  セヴィーは「こちらへどうぞ」と手招きをして歩き出した。どうやら、皇女が待つサロンまで案内してくれるようだ。  必要はないが、背後を取られたくはないので、おとなしくニールはセヴィーの後ろに付いて歩いた。 「てっきり、フェレ大佐が来られるとおもっていたんですが……やっぱり、エヴァンジェンス大佐が気になっちゃったんですか?」  「どういうことだ?」  人のまばらな廊下を進みながら、セヴィーはわざとらしく「おやおや」と肩をすくめて見せた。  本人の思惑がどこにあるのかは分からないが、馬鹿にされているようで、かんに障る仕草だった。  思わず不満を顔に出すと、してやったりと細目がわずかに開いた。  緑色の瞳が、長い前髪の隙間からちらつく。 (オレが嫌いなのはよく分かったが、絡まれる理由が、さっぱり分からないな)  セヴィーと顔を合わせたのは、今回で二度目だ。  取引場所を指定するエフレムからの手紙を持ち、勝手に部屋に入り込まれていた。     
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