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眩い、冬の初めの真っ白の朝日を背にして立つ背の高い男。
逆行になっていて顔はわからないが、漂ってくる苦い、煙草の臭いにニールは眉をひそめた。
違う。
あの、綺麗な顔をしたお兄さんじゃあない。
「――だれ?」
心臓が、どきどきする。
はやく逃げなければと思うのに、足がすくんで動けなかった。
人影は、怯えるニールを見下ろして笑った。
笑っているのに、恐怖を覚える奇妙な笑顔だ。
ゆっくりと、今度は足音を立てずに近づいてくる男の手には、果物の皮をむくときに、ばあやが出してくるナイフに似たものが握られている。
「危ないから、触ってはいけませんよ」と、怖い顔をしてばあやがニールに言い聞かせていたもの。
ギラギラと光る太陽を思わせる短剣がひゅっと乾いた音を立てて振り上げられ……ニールは、左目の光を失った。
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