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昼食の時間になった。
売店でコロッケパンと焼きそばパンを買ってきて、自分の机に置く。そして隣にコンビニで買っておいたカフェオレを添えれば、僕の昼食は完成だ。
栄養バランスは気にしない。
そんなものどうだっていいのだから。
「……見えたわよ。誠くん」
──また、現れた。
正面に、星野さんが弁当箱を両手に立っていた。
弁当箱の上には、いつもの水晶玉が乗っている。
「この後、誠くんにとって辛い試練が待っているわ。きっと体力を大きく使うこと間違いないわね」
「う、うん。まぁ、そうだね」
試練って、多分、五時間目にある持久走のことだろう。
言うならば、その試練は星野さんも乗り越えなければならないと思うのだけど。
「きちんとした栄養補給をして、試練に備えることね。誠くん。……あら、もしかして誠くんのお昼ご飯、それだけかしら」
机の上のパンとカフェオレを見る星野さん。
「まぁ、そうだけど」
「何を考えているのかしら。茶色ばかりで栄養バランスが偏りすぎているわ。自殺行為よ」
「は、はは……」
うるさい。大きなお世話だ。
星野さんは僕の正面の机に座り、弁当箱をこちらの机に置いて、身体も僕の方に向けた。
──どうしたのだろう。急に。
「誠くんはツイているわね。偶然にも、今日はお弁当を作りすぎてしまったの。占いで、お昼はたくさん食べるようにとの警告が出たから。だから、誠くんさえよかったら、少しだけ、食べても……」
「えっ?」
呆気にとられて、間抜けな声が飛び出した。
その声に反応してか、星野さんは、びくっ、と小動物のように一瞬震えて、言った。
「……なんでもないわ。そういえば私、今日は委員会の仕事があるの。すぐに行かないと間に合わないわ。じゃあ、また後でね」
「あっ、星野さん……」
星野さんはそそくさと立ち上がると、お弁当といつもの水晶玉を持って、教室から逃げるように出ていった。
立ち上がったときの星野さんの顔は、なぜか、風邪でも引いているかのように、真っ赤だったように見えた。
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