25人が本棚に入れています
本棚に追加
その影とは、本来人のいる筈のない塔の頂上でマントを翻し、黒いマスクで顔を隠した男でした。
男は大声で叫びます。
「まて! このような茶番を許していては国が滅ぶ! 今すぐに中止せよ!」と。
その声は、会場に設けられた音響設備を通し、参加者や来賓、そして見物客たちの耳へと届きます。
「警備は何をしておった! 無礼講とはいえテロリストの進入を許すとは何事か!」
すぐさまグルベンキアン候の叱咤が会場に響きわたり、城の警備担当者たちが塔の男を逮捕に向かいます。ところがです。塔の上で確保された男とはなんと、案山子だったのです。
会場内は、たちまちのうちに犯人の正体に思い巡らせる人々の囁く、ざわめきによって、騒然となってしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!