スポーツドリンクと深夜の長電話

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いい子いい子はいらないけど、成海の言葉はちゃんと胸にしまって、菫は準々決勝のトラックに立った。 「菫!頑張ってー!」 「絶対行けるよー!」 応援してくれる部員の声も耳に心地よく届いて、ああ、きっとどこまでも走れる。 そう思ったら高々とシグナルの音がした。 走り出したら周りの景色はもう見えなかった。音も一切聞こえない。 ただ頬を切る風を肌に感じて、照りつける日差しを浴びたトラックを足で踏み、軽やかにそれでいて力強く一歩を進み、最後はそのままゴールしていた。 「菫!!自己新!!自己新!!」 「すごいぞ神谷!!」 タオルを渡すより先に理沙に飛びつかれ、菫は足元をふらつかせながらも、理沙を抱き抱えた。 顧問まで菫に抱きつこうとしたので、理沙がサクッと 「セクハラになりますよ。」 と言って、しっしっと追い払った。 「ありがとう。いつも支えてくれた理沙や先生のお陰です。」 菫はお礼を述べ、理沙の肩越しに観客席を見たが、もう成海の姿はそこから消えていた。 帰ったのだろうか。一応、お礼を言いたいと思っていたのだが。
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