616人が本棚に入れています
本棚に追加
準決勝でも自己新に近いタイムを出したが、決勝には残れなくて、それは次の課題になったが、菫にとっては純粋に楽しめたレースだった。
リレーなどは3年生と2年生が出るので、菫は今日は他に出番がなかったので、着替えるため控え室に向かった。
今もユニフォームの上にチームで揃えたTシャツとジャージのズボンは履いていたが、汗もかいているので、ユニフォームを脱ぎたかった。
菫が控え室へ続く細く長い通路を歩き、すれ違う他所の学校のチームに軽く挨拶をしていたら、
「委員長、お疲れ様。」
と、聞き覚えのある声がした。
えっ?いや?えっ?
菫は立ち止まり、そんなまさかと思いきょろきょろと見渡すと、人混みの中、壁にもたれて立つ伊勢谷がそこにいた。
えっ?
何回か瞬きをした。
でも伊勢谷は幻のように消えたりしなかった。
「速かったね。決勝いけるかと思ったのに。」
「えっ?いや、ちょっと待ってください。」
完全に休日の格好と思われる伊勢谷先生。
ジーパンに赤いスニーカーにグレーのTシャツ。しかも鼈甲色の丸いフレームの眼鏡をかけている。
「な、何してるんですか!?」
思ったより大きな声が出て、菫は慌てて両手で口を押さえた。
休みだよね?休みにわざわざ副顧問でもないのに、何で大会にきてるの?
最初のコメントを投稿しよう!