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大会自体は夕方まで続き、その後は部員で晩ご飯を食べに行き、菫は午後8時半には家に帰った。
あの後、成海は一切見なかった。何か一言でも言ってやろうと思っていたのに。
家に着くと、母親と父親がリビングでテレビを見ながら、落ち着きなさげに何度も時計を見やっている。
「ただいま。」
「あ、菫!試合はどうだった?」
母親はソファーに座ったままで、首だけ菫の方に向けて声をかける。母親はきっと桜の帰りを心配していたのだろう。
我が家が桜を守らなくてはならない子だという扱いになったのはいつからだろう。
そして自分が一人でも強く生きていけると思われるようになったのはいつからだろう。
「試合は自己新が出たから。」
「おめでとう!菫、ずっと頑張ってたものね。」
もちろん、娘の活躍は父親も母親も自分のことのように喜んでくれる。
頑張っていることを否定することもない。
だけど……自分が泣いたり喚いたりすることはないと思っている。そんなことをする年齢は卒業したと。
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