スポーツドリンクと深夜の長電話

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何を話したらいいんだろうって、いざ電話がつながると、菫はあたふたしてしまった。 本当は話したいことがたくさんあったような気がする。 「先生、今日は来てくれてありがとう。差し入れも。」 でも、言葉になるのはお礼だけで、話を先に進めることすらできない。 「どういたしまして。」 「お休みだったんでしょう?用事あったんじゃないの?」 もしかして彼女がいるのではないかとか、そんなこと考えもしていなかったけど、あの身形と雰囲気なら、彼女の一人や二人いて当たり前だ。 「生徒が教師の心配をしなくていいから。それよりご飯の話、付き合って欲しいところがあるんだけど。」 「付き合って欲しいところ?」 菫が復唱すると、伊勢谷は一瞬間をとって、何かを決意したように口を開いた。 「バーベキューに行かない?」 「へっ?先生、キャンプとかバーベキューとかする人なんですか?」 言っちゃ悪いが、どこからどう見ても、360度見渡しても、アウトドア派には見えない。 「姪っ子が連れて行けとうるさいの。人数が多い方が楽しいだろうし。それに、下手に店で食べるより人目とか気にせず話もできるかなって。」 姪っ子さんがいるんだと、菫の脳内に新たに伊勢谷の情報が書き込まれる。
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