スポーツドリンクと深夜の長電話

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成海と話していると、時間はあっという間に過ぎる。とりとめのないことをただ話しているだけなのに。 時計の針が午前2時を指した時、さすがに菫に睡魔が襲ってきて、欠伸をひとつした。 「そろそろ寝なきゃね。すーちゃん、今日1日頑張ったもんね。」 菫を気遣うように優しく声をかけてくる成海に、菫は強がらずにただ素直に頷いてしまう。 「成海、いつも話し相手になってくれてありがとう。」 「そんなふうに言われると、やっぱりすーちゃんに会いたくなるんだけど。」 「だからそういう冗談はやめてって……」 「本気なんだけど。」 「……。」 「付き合って。」 「えっ!?」 付き合う!?付き合ってって今言った!? 「再来週あたり俺に時間ちょうだい。」 再来週はお盆の時期に入るので、部活もやすみになるから、暇なのは暇だが……この年になり、家族で旅行もほとんど行かないし……。 「一泊二日で写真を撮りに行こうと思って。一人じゃ退屈だから一緒に来てよ。」 ……写真!文化祭での成海の写真に菫は確かに心惹かれていた。 成海の見る景色を見たいと思う自分がいる。 部長から宿題が出ているから撮りに行くのだろうが、それに同行して欲しいとのことだろう。 「おいでよ。いいところだから、色々とモヤモヤしていることも、忘れられると思うよ。」 「い、行く!あ、でも家族に相談してから……」 まさか成海と、男の子とお泊まりなんて言えないから、何か適当な言い訳は探さないといけない。 「うん。じゃあまた返事きかせてね。」 成海が自分を誘った理由なんて、全く見当もつかないけど、モヤモヤとしたこの言葉にもならない気持ちを消せるなら、付いて行きたい気持ちが菫にはあった。
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