プロローグ

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そんな二人だったから、幼い頃から桜にはたくさんの友達がいた。 保育園の頃も、小学生の頃もいつでも人に囲まれていた。 桜は大人しく控え目で、自分から声を発することは少なかったが、それでも「桜ちゃん」「桜ちゃん」と人が集まってきた。 一方の菫は、桜よりも自分の思いをはっきり言うことができたし、運動神経も良かったが、その活発さやハキハキとした物言い故に、友達から一歩距離を取られることが多かった。 「菫ちゃんと桜ちゃんって似ていないね。本当に双子?」 それが周りが口にする言葉だった。 小学校低学年のときには 「えー?菫ちゃんと同じクラスか。桜ちゃんの方が良かったな。」 という声を、菫自身耳にすることもあった。 幼さからくる残酷さを菫は10歳にもならないうちから、身をもって経験していた。 でも…… 周りがそんなのでも、桜だけは菫を頼りにしていた。 自分が遊びに誘われているのに、必ず菫も連れて行った。 苦手な暴力的な男の子がいたら、菫の陰に隠れて助けてもらった。 周りが「桜ちゃん!」と言えば言うほど、桜は菫に引っ付いた。 菫は別に桜に優しくしたつもりはない。桜がドジを踏めば、「しっかりしなさいよ。」と苦言したし、頑張ってもできないことがあれば、「もっと努力しなさい。」と言い放ったこともある。 ただし、言った後で必ず桜が立ち上がるまで、出来るようになるまで傍についていた。 だから、二人はお互いにお互いを必要としていた。 桜といれば友達ができると思った菫。 菫といれば助けてもらえると思った桜。 そんな関係で中学にすすみ、二人の中にも変化が訪れた。
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