ブラウニーと新しい自分

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「思い切り切っちゃってください!」 昼下がりの美容室で桜がそう言うと、担当の女性美容師はさすがに躊躇い、 「本当に良いの?綺麗な髪だしもったいないよ。」 と再度、桜に意思を確認をしてきた。 「いいんです。肩ぐらいにしてもらって、切りっぱなしボブにして、前髪パッツンであとこの色に染めてください。」 雑誌のカタログから切り抜いてきたピンクアッシュの髪色をしたモデルの写真を見せたら、さすがに中学生の頃から担当してくれてきた美容師の手が止まった。 「桜ちゃんの学校って、染めるの禁止じゃなかったっけ?」 「大丈夫です。逃げ切るんで。」 安藤くんだって逃げ切っているのだ。よくよく見たら、あれは地毛の色ではない。 黒色が入りにくいのは入りにくいのだろうが、日本人の頭からあんな赤茶色が生えてくるわけがない。 「桜ちゃん、何かあった?」 今度は攻める方向を変えたのか、美容師から桜の身辺を探る質問がされた。 桜が染め直せと怒られるのを危惧してくれているのだろう。 「何も。ちょっと変わりたいと思っただけです。」 もちろん髪の色を変えただけで、日常が劇的に変化するわけじゃない。 それでも何か行動しなくてはという思いに駆られていた。
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