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真尋がフェスの会場から家まで送ってくれた夜、桜は両親に怒られるまではしなかったが、チクリと針は刺された。
まずは帰りが遅くなったこと。
真尋は7時ぐらいに一度、桜に帰ろうと言ってくれたのだ。会場から家までの距離を考えてのことだ。
でも、桜は真尋達が最後にステージに上がるバンドの長年のファンだというのを、三人の会話の端々から感じ取っていた。
だから、自分のせいで我慢をさせたくなかったし、それに三人が憧れるバンドのステージを見てみたいと思ってしまった。
それで残ると言い張り、最終的には真尋に送ってもらうことになってしまったわけだ。
それが母親にとっては、心配の種その二となってしまった。
「あんな派手な男の子と付き合っていて大丈夫なの?」と。
桜は咄嗟に母親に言い返していた。
「安藤くんはいい人だよ。だから悪くいわないで。私にないものをたくさん持っている。」
だって……好きとかそういうのじゃない。
真尋が例え女の子であったとしても、自分は真尋を尊敬していた。
恋愛感情とか抜きにして、この人みたいに強くなりたいって思う。
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