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髪の毛を思う通りに美容師さんに切ってもらい、桜は帰り道に直輝にメッセージを送った。
[会って話がしたいです。来週あたりに会えませんか。]
もうごっこ遊びも全部終わりにする。
自分から切り出すのは勇気がいるし、きっと声だって震えてしまうだろう。
でも、このまま流されて直輝とエッチするのは違う。直輝がそういう関係を優先させたいなら、自分達が一緒にいることは難しいだろう。
会うたびに喧嘩なんて、お互いにしんどい思いが重なるだけだ。
それなら綺麗さっぱり何もなくなってしまった方がきっと良い。
直輝から来ていた花火に行こうとの誘いのメッセージに対しては、返事はもう少し待っていて欲しいと送っていたが、何度か催促のメッセージが返ってきていた。
これ以上の先延ばしは人としても失礼だ。
桜はイヤフォンを耳にはめて、家路までの道を小走りした。
真尋に教えてもらった曲を何曲もスマホにダウンロードして、最近はずっと聞いていた。
ほんの少し新しい自分になれそうな思いにさせてくれた。
帰ったらお菓子でも作ろう。ナッツとチョコがあったから、ブラウニーにして……
料理をしている間は、嫌なことも悩みも遠くの方へ放り去ることができた。放り去って忘れられた。
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