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家に帰って、桜はリビングでアイスクリームを片手に高校野球のテレビを見る菫に「ちょ、ちょっと!?」ともちろん言われた。
「髪、どうしたの?」
「えっ?切ったの。スッキリしちゃった。」
「スッキリしちゃったじゃないよ!色!そんな色にして、生徒指導に引っかからないと思っているの?」
桜はこれ見よがしに溜息をついた。
こういうところ菫ちゃんは、母親にそっくりなんだから。
「別に平気。それに、あまり分からないでしょ?」
菫は毎日自分の姿を見ているから気付くが、夏休み明けの久しぶりの再会で、生徒指導の教師が気付く程の明るさではない。
もともと色素も薄い方だ。地毛ですと言い張れば、逃げ切れるような気が桜はしていた。
「お母さんがまた心配するよ。」
母親は今日も仕事だ。今夜は遅くなると言っていた。
「お母さんってさ、どうして私ばかり心配するんだろうね。」
迷惑とは言わない。感謝していないわけではない。
でも、自分だって菫と同い年だ。運動は苦手だけど料理や裁縫に関しては菫より得意だ。
なのに頼りなく思われるのは、正直ちょっと腹が立ったりもする。
「それは桜が可愛いから……」
「それなら菫ちゃんだって可愛いよ。私ね、変わることにしたの。」
菫に宣言したのは、自分の気持ちが揺らがないようにと言うのもあったが、もう菫の後ろに隠れる自分じゃないって、伝えたかったのかもしれない。
泣き虫の自分じゃないって。
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