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「宮田くんは、夏休みは何してるの?」
「バイトしたり、友達と遊んだりかな?夏らしいことはあんまりしてないなあ。」
成海は苦笑して、自分の腕を桜に見せた。
「ほら、あんまり焼けてないでしょ。引きこもっているのが丸分かり。」
確かに成海の腕は、外の運動部に所属している人たちに比べたら白くて、夏らしさは皆無だった。
「宮田くんって、どうして運動部に入らなかったの?この間、一緒にサッカーした時に思ったんだけど、運動神経はすごく良いのに。」
サッカーの腕はさすがに猛ほどではないが、ドリブルやシュートのボールさばきは、並のレベルよりははるかに上手かった。
「足……」
成海はベンチから投げ出た足をぶらぶらとさせた。
「ケガしたの。中学の時にバレー部で膝やっちゃって、今もボルトが入ってる。」
成海はとても冷めた目をしていた。全てを諦めたような目を。そんな姿の成海に出会ったことは、桜は中学校から一度もなかった。
「日常生活に問題はないし、ちょっとした運動なら平気だけど、選手としてやっていくのは、もう無理だから。」
「だから体育も……」
成海は体操服に着替えてはいるものの、試合などはグラウンドに座って、みんなに応援や野次を飛ばしていることの方が多い。
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