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「直輝、あのね……」
このまま直輝の苛立った状態が続いては、本当に伝えたかったことが話せなくなると思った。
桜が意を決して口を開くと、直輝はそれを制するように右手を胸の前に挙げた。
「俺に別れ話をするつもり?」
「……。」
桜は初めて直輝が何の話か分かっていて、自分に会いに来たことを悟った。
勘のいい直輝なら、既に気付いていてもおかしくはないことだ。
「桜って、けっこう調子のってるよね。」
直輝……怒っている。
いや、怒らせるようなことをしているのは自分だけど、怒ったらこんなに声を荒げるんだって。
自分は今までこの人の何を見ていたのだろうかって今さらながら思う。
「桜さ、自分がちょっと可愛いからって、何をしても許されると思っているの?」
「そんなつもりない……。」
桜が否定すると、直輝はバカにするように鼻で笑った。
「周りから見たらそうは見えないってこと。色んな男に愛想ふりまいて、俺と別れて今度はあの三人のうち、どの男と付き合うつもり?」
「そんなんじゃないって!みんな、友達だもん。直輝だって女の子の友達いるでしょ!」
「だから、そういうところが腹立つって言ってんの。」
直輝がテーブルに置いていたカフェオレを勢いに任せて手にとったので、桜は思わず顔を背けた。
かけられると思った。
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