ブラウニーと新しい自分

14/20
前へ
/748ページ
次へ
「何してんの?相手、女の子だよ。」 いっこうに髪にも制服にもカフェオレがかからないので、桜が細く目を開けると、直輝のグラスを奪い取る成海がそこにいた。 「宮田くん……」 どうしてここに? 「神谷、ごめんね。神谷の様子が変だからつけてきちゃった。」 成海は桜に微笑すると、冷静にこの空気に一切飲まれず、グラスをそっとテーブルに置いた。 「あー、やってらんねぇ。」 直輝は苛立った様子で、ガタリと立ち上がって座る桜を見下ろした。 「いいよ、別れても。俺も別に桜に思い入れがあったわけじゃないから。可愛いなって思って声をかけただけだし。」 「……。」 「でも、可愛いだけだったね。話も特別面白いわけでもなく、無駄にガードも固い。桜みたいに簡単に男に媚び売る女、彼氏でいる方がしんどい。」 違うって叫びたいのに、声にならない。 桜の脳裏に中学校のときの自分が浮かんできていた。 直輝の台詞は過去にも言われたことがあったような気がした。 「桜は無意識に人の心を踏みにじってるよ。過去にも桜の中途半端な態度に、傷付いた人がたくさんいるんだろうね。」 最後の直輝の槍のように突き刺す一言で、桜はふと思い出したことがあった。
/748ページ

最初のコメントを投稿しよう!

620人が本棚に入れています
本棚に追加