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「何してんの?相手、女の子だよ。」
いっこうに髪にも制服にもカフェオレがかからないので、桜が細く目を開けると、直輝のグラスを奪い取る成海がそこにいた。
「宮田くん……」
どうしてここに?
「神谷、ごめんね。神谷の様子が変だからつけてきちゃった。」
成海は桜に微笑すると、冷静にこの空気に一切飲まれず、グラスをそっとテーブルに置いた。
「あー、やってらんねぇ。」
直輝は苛立った様子で、ガタリと立ち上がって座る桜を見下ろした。
「いいよ、別れても。俺も別に桜に思い入れがあったわけじゃないから。可愛いなって思って声をかけただけだし。」
「……。」
「でも、可愛いだけだったね。話も特別面白いわけでもなく、無駄にガードも固い。桜みたいに簡単に男に媚び売る女、彼氏でいる方がしんどい。」
違うって叫びたいのに、声にならない。
桜の脳裏に中学校のときの自分が浮かんできていた。
直輝の台詞は過去にも言われたことがあったような気がした。
「桜は無意識に人の心を踏みにじってるよ。過去にも桜の中途半端な態度に、傷付いた人がたくさんいるんだろうね。」
最後の直輝の槍のように突き刺す一言で、桜はふと思い出したことがあった。
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