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あれは中学校2年生の時だった。
桜はひとつ上の先輩と付き合っていて、それなりに彼氏彼女として穏やかにやっていた。
先輩は優しくて、いつも桜を笑わせてくれた。
別れた理由だって、とくに酷いケンカとかではなくて、先輩が高校生になって時間が合わなくなったからだったので、決して今でも悪い思い出ではなかった。
先輩と付き合っている時でも、やはり自分のことを好いているのだろうなという男の子もいたし、友達として仲良くしている男の子もいた。
女の子の友達たちは、そんな自分を「桜ちゃんは可愛いからね。」「うらやましい。」と言って、ちやほやしてくれていた。
でも、桜の中にはいつも埋まらないぽっかりとした穴があった。
みんなが自分に寄ってくるのは、私が物分かりが良くて、自己表現しなくて、この見た目だから?
そんなある日だった。
桜の上靴が両方なくなったのだ。本当に突然。前触れなんてなかった。
なくなったことは、クラスでも事件として扱われ、捜索が始まった。
菫もすごく心配して、放課後などは一緒に探してくれた。
でも、結局見つからなくて、一週間後に新しい上靴を購入した。
上靴はなくなったものの、その後誰かに悪口を言われたり、仲間外れにされることもなかった。
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