プロローグ

6/11
前へ
/748ページ
次へ
嫌な夢は時折、菫を襲ってきた。自分が作り上げてきた人々との関係が崩れ落ちていく夢だ。 「菫ちゃんより、桜ちゃんの方がいいなぁ。」 「桜ちゃんの方が優しいし可愛いし魅力的。」 そんな声が耳に届く。みんなが自分から離れて行く。手を伸ばしても届かない。 ……置いていかないで…… ……独りにしないで…… そうみんなの背中に向かって、叫んだところで菫は必ず目を覚ました。 目を覚ましたら汗をビッチョリかいていて、頭がぼーっとした。 大丈夫。大丈夫。 おまじないのように、両手で頬を覆った。 ベッドから抜け出し、寝間着を脱ぎ捨てる。 モスグリーンのチェックのスカートに白のカッターシャツ、スカートとお揃いの色のリボンをつけて、紺のブレザーを羽織る。 いつもと同じ朝だ。 少し夢見が悪いだけ。 菫は仕上げに紺のハイソックスを履いて、階下に降りた。 階下からはお弁当用の唐揚げの匂いがしていた。
/748ページ

最初のコメントを投稿しよう!

618人が本棚に入れています
本棚に追加