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店長が桜に目配せで、話し相手になってあげてと合図を送ってきたので、桜は遠慮しつつ伊勢谷の隣の席に座った。
「君にだから言うけど……」
伊勢谷は話を聞いて欲しいようで、桜が座ると同時に堰を切ったように話し始めた。
「進路に関しては、うちのクラスは問題児が二人いる。」
「二人?」
一人は菫ちゃんだ。本人が悩んで成績が良いのに進路が決まらないという問題児。
「君の妹と安藤。安藤のやつ、どこの類系でも自分のすることは変わらないから、俺に任せるとか言うんだよ。」
「バンドがしたいから……」
きっと彼は卒業したら、大学や専門学校には進学しない。礼央や亜貴、翔太とずっと音楽を続けると決めているから。
「あいつさ、1学年で遅刻と早退と欠席の合計がダントツで1位なんだよね。俺も教師経験が長いわけではないけど、今まで色んな生徒を見てきて思うのは、安藤みたいなタイプは、いつ学校を辞めてもおかしくない。」
桜の隣に座る伊勢谷は困り果てているようで、今日はいつもと比べものにならないぐらいよく喋った。
「他人に依存するやつでもないから、友達がいるから学校を辞めないとかもまずないタイプだし。3学期もあまり休まれたら、出席日数も危ういしね。だから、あいつが辞めずに卒業できる場所はどこか考えるけど、簡単に答えは出ない。」
安藤くん……途中で学校辞めて欲しくないなぁ……。もし辞めたら、もう自分も彼に会うことはない気がする。
そんな日が来ることを想像するだけでも、心に穴が空いて息苦しくなる。
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