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桜は素直にここ最近、自分にあったことを話した。成海とは友達になり、菫ともトゲトゲとした関係はなくなったと。
「だから、最近はけっこう元気なんです。」
「それなら安心した。」
その一言で、桜は伊勢谷が自分のことを心配してくれていたことを思い知らされた。
勝手に授業をエスケープしたり、バイト先で落ち込んだ姿を見せたりしたこともあったが、口にはしないけど、教師として見守ってくれていたことを。
「伊勢谷ちゃん、この1年、ありがとうございました。」
「何、急に?」
「いや、私、ちゃんとお礼を言ったことがなかったような気がして。」
桜がぺこりと頭を下げると、すぐに伊勢谷に軽く拳で小突かれた。
「お礼はまだ早い。感謝しているなら、最後の期末試験で、リーディングを80点以上とること。」
「ええっ!?本気で言ってますか?」
「本気で言ってる。80点以上とったら、英語準備室にお礼の挨拶にきてください。」
感謝しているなら形で返したい思いもあるけど……
80点以上なんて夢のまた夢だ。今日から猛勉強しても怪しい。
それでも……この人に何か返せるとしたら、それしかない。
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