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「あ、ごめんね。食べたいもの決まった?」
先にそんな桜に気付いたのは亜貴で、桜の食べたいものを確認してくれた。
「ううん。全然平気。むしろ素敵だなって思って見てた。」
「前のライブでも言っていたアルバムが3月に完成しそうなの。自主制作だから限界はあるけど、それでも今できる一番良いものを作りたくて。バイト代もつぎ込んだし、真尋の伯父さんにもかなりお世話になったし、中途半端なものは嫌だなって。」
この人達は今ここじゃなくて、さらにその先を見ている。その姿は自分にも「私もやろう。」と刺激を与える。
「完成したら一番は桜に聞いて欲しいんだけど……」
礼央はそこまで言って、言葉を詰まらせた。そんな礼央の言葉を引き継ぐように、亜貴が話を続けた。
「俺ら的には真尋から桜に渡して欲しいと思っている。あいつ、そういうことはかなり恥ずかしがるから、本当は桜に聞いて欲しいくせに、なかなか言い出せないとは思うけど。でも、気長に待ってやってくれる?」
「うん。待つ。」
桜自身、真尋から受け取りたい思いがあった。
この一年、安藤くんはたくさん自分を支えてくれた。
だから、安藤くんがみんなと考えて作り上げたものを、彼の手からちゃんと受け取りたかった。
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