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「桜ちゃんは安藤くんにあげないの?」
桜の横で支度をしていた舞香に言われ、
「えっ!?」
と桜は周りが振り返るぐらいの大声で反応してしまった。
「あ、ごめんね。最近、一緒にいるのを見るから、仲が良いのかなぁと思って。」
「仲は良い方かも……いつもお世話になっているから。」
「それなら尚更あげなきゃだよ。私ね、今年はフォンダンショコラに挑戦するの。桜ちゃんも一緒にどう?」
フォンダンショコラは桜も作ったことのないお菓子だった。舞香と一緒に試行錯誤しながら作るのは、絶対に楽しいだろう。
でも……
安藤くんがもらってくれる?
アップルパイもオムライスも美味しいって言って食べてくれたけど、バレンタインデーという特定の日に渡すのって、結構重くない?
「舞香ちゃんは誰か渡したい人がいるの?」
「……誰にも言わないでくれる?」
舞香が自信なさげに俯きかげんに尋ね返してきたので、桜は「もちろんだよ。」即座に返事をした。
「文化祭の後ぐらいから、松田くんのことがずっとカッコイイなぁって思っているの。いつも部活でサッカーの練習をしてるでしょ。放課後に図書室で友達を待っている時とかに、気付いたら目で追いかけてる自分がいて。」
開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだと桜は思った。今まで舞香から猛が好きだなんて素振りは一度もなかった。
「でもね、今年はまだあげられないなぁって。全然接点がないから。だから、練習をして来年あげるの。」
「もし、迷惑じゃなかったら、私が協力するよ!」
桜はまた即座に反応していた。
口にはしないが、舞香ちゃんだって気付いているはずだった。自分が教室で松田くんといることを。
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