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フォンダンショコラを渡せないかも……
そんな思いが桜の心にむくむくと湧き上がってきたが、それ以上に……
安藤はいつ学校を辞めてもおかしくないと思う
と、喫茶店で言っていた伊勢谷先生の悩ましげな横顔を思い出す。
出席日数は大丈夫なのだろうか。
そんなことを自分が思うことすら、安藤くんの何様のつもりだよと思われそうだった。
でも、心配なんだもん。
桜が昼休みに自分の席で窓から外を眺めて、ぼんやりとしていると、成海に「はい。」と苺ミルクを渡された。
「あ、ありがとう。」
成海は桜の前の席の椅子を引き、桜の方に向けて座った。
「神谷さ、初めて真尋に会った時、苺ミルクを飲んでいるのを貶されていたよね。」
桜が成海の方に向き直ると、珍しく成海も苺ミルクを飲んでいた。
「俺も美味しいと思うんだけどな、苺ミルク。」
「美味しいよね!私、あの時、安藤くんのこと超嫌なやつって思った。」
桜が顔をしかめると、成海はあははと声に出して笑った。
「安藤くん、明日は来るかな……。」
「心配?」
「うん。出席日数が足りなくなって、学校を辞めて欲しくない。」
どうしてだろうか。桜は自分から好きだった成海に真尋の話をしていた。
靄のかかった心の内を吐き出さずにはいられなかった。
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