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桜は結局、真尋の家にあげてもらい、温かいお茶まで淹れてもらってしまった。
まだ泣き腫らした目のまま、膝にフォンダンショコラの入った箱を置いて、桜はソファーに腰掛けた。
「泣き止みましたか?」
真尋は揶揄うような口振りで言うと、桜の隣に座った。
前よりも二人の距離感が狭まっているのは、お互いに感じていることだ。少し動いたら肩が触れ合うぐらいだ。
でも、その距離感を桜はもっと縮めたいと思ってしまう。
触れたくなる。この人の傍に寄りたいと思ってしまう。
「今日ね、何の日か知ってる?」
「今日?何日だっけ?」
本当にこの人は……。
桜は真尋の膝にフォンダンショコラの箱を置いた。
「あげる。バレンタインデーだから。」
「あー……。」
ようやく納得する真尋に、桜のもどかしい思いはピークに達していた。
「あー……じゃないし!あげたいと思ったの!安藤くんのことが大切だから!」
そう桜が喚いた瞬間、真尋は桜に自分の顔を近付けて笑った。
さらに近付く距離に桜はただ目をぱちぱちと瞬かせた。
「あの、安藤くん……」
「食わせてよ。」
えっ?えっ!?今、食わせてって……冗談だよね?
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