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もうすぐ彼女と出会って一年が終わろうとする。
「成海、あのね、フォンダンショコラを作ったの。今日、バレンタインデーだから。お世話になっている成海にあげたかったの。あ、味は確かだよ。桜に教えてもらいながら作ったから。」
放課後に空き教室に呼び出され、何事かと思ったら、自分の気持ちを話すのが苦手なすーちゃんが、たどたどしく思いを綴った。
本当に何ていうのか……
「ありがとう。せっかくだし一緒に食べようか。」
「えっと……あの……」
この間、キスしてから彼女の様子が今までと違う。今まで以上に女の子になった。
喋り出したらいつも通りに戻るけど、会った瞬間は、ぱっと頬を染めて目を潤ませる。ドキドキしているのを隠しきれない感じ。
そして、そんなすーちゃんが愛おしいと思う。
「ほら、行こう。」
俺は彼女に手を差し出す
「どこに?」
「俺の家。まぁ、すーちゃんが良ければだけど?また抱きしめちゃうかもしれないけど。」
「バカ!変態!」
すぐ噛み付くところは変わらない。でも……
すーちゃんはぎゅっと自分から俺の手を握った。
「そのフォンダンショコラ、すごく美味しいの。だから、私も食べたいから一緒に行く。」
「じゃあ帰ろっか。」
強がりて天邪鬼なすーちゃん。だからこそ、そんな彼女がほっとけない。
いつか彼女から俺に好きって言わせたい。
すーちゃんの細い指先に自分の指を絡めて、二人でゆっくりと学校をあとにした。
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