番外編 可愛い人

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子どもの時に母親が出て行ったせいなのかは知らないが、女に対して可愛いと思うことがなかった。 学校で一番可愛いと言われる子も、テレビのアイドルも女優も可愛いと感じたことがない。 世間一般的に可愛いという感覚は分かる。ただそこに、自分の感情があるのかというと、ないという話だ。 それでも、何回か女の子と付き合ったりはした。告白を断るのも面倒だったし、まぁいいかと軽いノリでしかなかった。 でも、最後には決まって同じ言葉を吐かれて別れた。 「私のこと本当は好きじゃないよね?真尋は好きじゃないけど、同情で付き合ってくれていたんだね。」 と。「そう言うなら別れよう。」と言うと、必ず頬を叩かれ大泣きされた。 勘弁して欲しい。 泣き顔を見るのは苦手だ。出て行った母親の泣いた顔を思い出すから。 空を仰ぎ見ても溜息しか出なくて、泣き続けるその子を慰める言葉は見つからなかった。
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