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俺を信頼しきった神谷桜は、成海に恋をしていた。叶わないって分かっていても、彼女は成海を追いかけていた。
最後に泣かなければいいけどと、俺はそんな彼女を横目で見ていた。
彼女に泣いて欲しくない。
今までは他人が泣いても、放ったらかしだった。勝手に泣いているのだから、俺には関係ないと思った。
でも、なぜだろうか。
彼女が泣いたら、何とかして泣き止ませたいと思ってしまう。
そうしてその術を俺は持っていた。
「家に泊めて。」突然、そんなことを口走る神谷桜。ぎゅっと人の服を掴むし、勢いで抱きついてくるし。
彼女は俺の腕の中だと、落ち着くようで穏やかな呼吸をした。胸に顔を埋めて、背中に手を回してくる。
小さな彼女の体。柔らかい髪。あぁ女の子なんだなぁと思わされる。そして自分が男だということも。
抱きつく彼女を、痛くないように、でも安心できる強さで抱きしめ返した。
自惚れではないけれど、俺に抱きしめられると彼女は泣き止んだ。
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