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神谷桜は最終的に成海と友達になった。
でも、彼女は後悔はしていなくて、とても良い顔をしていた。
風邪を引いた彼女を見舞いに行った日。一緒にクリスマスケーキを食べた。誰かとクリスマスケーキを食べることも自分には久しい感じがした。
お互いにまだ遠慮という距離感はあるものの、目があった瞬間に思えた。来年もこうやって一緒にいられたらいいのにと。
「バイトだから帰る。」と俺が立ち上がった瞬間に、彼女は俺の服の裾を掴み言った。
「帰らないで。」
と。瞬きをする瞳が訴えていた。まだ一緒にいたい。離れたくない。
なぜだろうか。その姿に思ってしまった。
彼女のことが可愛いと。
外見とか仕草とかではない。もっと深いもの。
そう思ったら、ブレーキが効かなくて、手を伸ばして軽く抱きしめたら、神谷桜は頬を赤くして、ぽーっとした表情を見せた。
ほら、そういうところと思う。
今まで散々、自分から抱きついてきたくせに。何でここにきて赤面するんだか。
でも……
そんな彼女もまた、とてつもなく可愛くて愛おしい。
自分の中にも可愛いとか愛しいとか、そんな感情があったことを悟らされた。
そした決してそれは、悪いものではないと思っていた。
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