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「桜ちゃんと菫ちゃんって似ていないんだね。」
聞き飽きたその言葉に、菫はうんざりして、適当に相槌を打った。
「菫ちゃんって、物言いがキツイし、見た目も可愛いキャラではないよね。」
うるさいって叫びたかったが、桜の彼氏ということもあり、菫はまだ思い留まっていた。
「もっと可愛かったら俺の友達に紹介したのに。」
「……」
もう黙っていられない。
菫はぐっと桜の彼氏の右腕をつかんでいた。
「そんなことこっちから願い下げ。」
「ほら、そういところがさー、可愛くないってかさー。」
男はけたけたと笑って、菫のことを適当にあしらっているようだった。
菫はさらにつかんだ腕の力を強めた。張り倒したい気持ちだったけど、外での悪目立ちはさすがにできない。
「可愛いなんて思ってもらえなくていい。これ以上、あんたといたら、不快感しか残らないから、私は帰るけど、これから先、桜を泣かしたりしたら許さないからね。」
本当はもっと思いの丈をぶちまけたかったけど、菫は何とか呑み込んで、男に自分と桜の食べた分のお金を押し付けて、家路に向かった。
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