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ふと顔を上げると、向かいに座っている女性と目が合った。
慌てたように視線を逸らされる。
自分の顔に手を触れてみて、無意識に頬が緩んでいたことに気付いた。
「……」
――不審に思われてしまった……。
確かに、夢の内容を思い出しながらニヤニヤするなんてただのヤバい人だ。
思ったことが全部顔に出る単純さ、そろそろ何とかしたい。
反省し、ちょっぴり凹みながらスマホをバッグの中に戻した、その時――。
”それ”に気付いた。
「……?」
何だろう、とバッグの中から取り出したのは、一冊の文庫本だった。
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