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学校のプールにはオオサンショウウオが住んでいる。
こんな時なのに、なぜかその噂話を思い出した。
クラスメイトたちの間でつい最近までまことしやかに囁かれていた風説だ。
もっとも、濁った水がすっかり抜かれてしまってからは誰もそんなことは話題にしなくなったし、そもそも最初から噂を本気にしている人はいなかったんじゃないかと思う。
わたしも含めて。
「俺の事なんか、眼中になかったのは分かってます」
放課後の喧騒が向かいの校舎から響いて来る。
脳内の半分をオオサンショウウオに占められつつ、わたしは目の前に立つ背の高い下級生の顔を見上げていた。
申し訳ないが、確かにまったく見覚えのない顔だ。
その額には、気の毒なことに冷や汗まで浮かんでいる。
「いきなりこんなこと言ってすみません。でも俺、中学の時から先輩のことずっと見てて。本気でその……好きなんで」
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