初夏の夢

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 “好き”のところで不覚にもドキッとしてしまった。  高二女子の心臓はなんて簡単に出来ているんだろう。  見知らぬ相手であっても、特別な言葉を向けられれば無条件に反応してしまうのだから。  平静を装いつつ、わたしは人並みに動揺していた。  男子生徒からいきなり非常階段に呼び出されるのも初めてだし、こんな風にまっすぐ思いをぶつけられるのも初めてだ。  さて、どうしよう。  “相手を傷つけずに振る方法”なんて知らない。  かと言って冷たくあしらってこの場を立ち去るわけにもいかない。  どう答えるべきか。途方に暮れていたその時、――目の前で光が弾けた。 「……?」  眩しさに目を細める。  向かいの校舎の屋上で、キラッ、キラッと何かが光っているのが見えた。  規則的な閃光。  誰かが鏡のようなものでわざとこちらに光を送っているようだ。  これが誰の仕業なのかを、わたしはたぶん知っていた。
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