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状況を理解したわたしは、止めていた息を一気に吐きだした。
力が抜け、あやうく望遠鏡を落としそうになる。
――びっくりした……。
すぐ隣に建っている西校舎。
その突き出した非常階段の踊り場から、凪がこちらを見上げていた。
「飛んで」
信じがたいことを言って、こちらに両手を広げて見せる。
わたしは下を覗き込んだ。
張り出していると言っても、着地すべき場所は隣の校舎の非常階段だ。
当然、その間には奈落の底のような隙間が存在するわけで――。
「ん、ごめん、むり」
「ムリじゃない。いいから飛べって」
「だって」
半ベソ状態でイヤイヤをしていると、後方からドタドタと足音が聞こえて来た。
石山先生のわめき声がぐんぐん近づいて来る。
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