夢が叶った夜

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「そうなんだ」 「この間もね」  話を始める一花に、零二は小声で呟いた。 「せっかくだし、弟くんの言葉に甘えさせて貰う?」 「ダ、ダメだよ!! 下に両親いるんだし」 「じゃあ、キスだけ?」 「……キスだけなら」  そう言うと一花は微笑んだ。それを見て零二はそっと頬に手を添えると、優しくキスをした。  きっとこれからもいろんなことが終わって、そして始まっていく。家族との暮らしに終わりを告げ、零二くんとの暮らしが始まる。  独身が終わって、結婚生活が始まる。一人の人生が終わって、二人で歩む人生が始まるんだ。まだその先もいろんなことが終わっては始まっていくんだろう。  終わりはいつも寂しいけれど、その分新しい楽しみが始まって。始まりはいつも勇気がいるけれど、それもいつかは終わりを告げる。  人生はその繰り返しで、その中でどれだけ自分が大切だと思う物を終わらせずにいられるかなのかもしれない。  そしてもし終わってしまったとしても、そこから何かを学び前を向いてさえ居れば、きっと前よりも良いことが始まる。私はそう信じている。  始まりはいつも終わりと共にある。
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