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「一花ちゃん」
「お久しぶりです」
声をかけてきたのは、父親の兄にあたる伯父だった。最後に会ったのはいつだろう、祖父母の家に年始の挨拶に行った時、偶然会って以来だろうか。それももう何年も前のことだ。
「双葉ちゃん、立派な娘さんになって。街で会っても気付かないな、こりゃ」
「そうですね」
「一花ちゃんもだよ。綺麗になっちゃって、どう?結婚の方は?」
出た。そんな気持ちを顔に出すことなく、一花は笑顔で言葉を返した。
「良い報告が私も早く出来るといいんですけどね。今は仕事が楽しくて」
この後に返ってくる言葉も、もう知っている。
「仕事が楽しいのもいいけど、もういくつだっけ?三十過ぎてるでしょ?子供産むなら早い方がいいよー」
「そうですね。でもこればかりは自分だけの問題じゃないので」
そんな会話を一通りすると、伯父は違う席へと移って行った。一花は思わずため息をつきそうになり、席を立つとそのままトイレへと直行した。
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