111人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
屋上で明と話をしてから、怜は授業をサボる事は無かった。
ただ、退屈そうに天井を見つめたり、気が付くと寝ていたり。明はその都度注意したが、余り効果は無かった。
困って相川に少し愚痴を言うと「居るだけでも進歩だよ。お前の力はすげえよ」と慰め、褒めてくれた。相川の言葉を聞くと素直に、怜が席に座っている事実だけでも喜びを感じられてきた。
* * *
もう突然居なくなることは無いと安心しきっていた矢先、四時間めの途中、怜は突然姿をくらました。
トイレに行くと言ったっきり戻ってこない。
授業に没頭してる先生は大して気にしていない様子で、授業終わりのチャイムが鳴った。
昼休みに入り、すぐに教室を飛び出し心当たりがある場所を全てを周る。
屋上,野球部部室,食堂,空き教室…心当たりを見てみたが居なかった。
まさか、と思ったがもしものことを考えて校庭に出、校門まで走り外を覗いた時……当たり前の様な顔をして、バスを待っている怜を見付けた。
明は一瞬我が目を疑ったが、はっきりと人違いでは無い事を悟ると門を出て、一目散に駆け寄った。
血相変えて走ってくる明を、怜は笑顔で迎えた。
「アキラ、どしたんだ?」
「ど、どしたんじゃねーよ、何してんだ?!」
「何って、帰るんだよ。さっき教室にかばん取りに帰ってアキラにちゃんと言おうと思ったら、居ないんだもん」
「今かよ?俺、休み時間入ってすぐ今までレイ捜して走り回ってたよ。途中で居なくなるからさ」
「あ、ごめん。そうだったんだ。僕、今から帰る」
「何で帰んだよ?」
「まぁ、仮病だからずるはずるなんだけどさ。さっき『トイレ行って気分悪くなって倒れました、帰らせてください』って川畑先生には言ってきた」
新学期から今まで怒った所を見た事無い、柔和な担任川畑は倒れたと聞いて、二つ返事で怜を帰したらしい。
「なんだ、やけに計画的犯行だな。だから何でだよ、理由は何だよ。」
「……次の時間身体測定だろ?出たくないんだ」
「はぁ?!身体測定ズル休みって、思春期の女子じゃ有るまいし」
呆れた声を出した明に、真面目な顔して怜が告げる。
「皆に、腕を見られたく無いんだよ……」
怜の一言を聞いて、アキラは押し黙った。
最初のコメントを投稿しよう!