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初対面の自分に“友達になってよ”と屈託の無い顔で、前の席の新しいクラスメイトは言った。
「なんだ?」
小学生ならいざ知らず、高3にもなっていきなり友達になろうって何?明は理解に苦しんだ。
目の前の初対面だけど、どこかで見たことあるような…と思い巡らせる。
「だからさ、友達になってよってお願いしてんの。僕、友達一人も居ないんだよ。これからヨロシク頼むよ」
日に焼けた顔に対照的な真っ白い歯がこぼれてる笑顔で答えられ、明の頭は疑問で一杯だ。
「友達がいない?何で?このクラス今まで一緒だった奴とか居ないの?」
「ん?居るけど、仲良い奴も居ないし…」
笑顔が少しだけ消えた。
高校二年間過ごして友達居ないって、ちょっとやっかいな奴なんじゃないか?と不安に思いながらも好奇心が勝ち、明はこの不思議な会話を続けた。
「ふーん、そうなんだ。友達、なっても良いけど、友達ってなろうと思ってなるもんじゃないだろ?
何も知らない者同志な訳だしさ、もし俺が物凄い性格悪かったらどうすんの?」
「大丈夫。きっと僕の方が性格は悪いから。っていうか君、教室入ってから見てたけどみんなに好かれてるよね。友達も多いみたいだし。何より…」
「何より?」
「勘と縁だよ。友達になって…なんて事言ったの生まれて初めてなんだ。
それに僕、自分の勘には何よりも自信あるんだ。仲良くなれると思う。君さえ良ければの話だけどね」
今まで出会った事が無い考え方をするタイプの人間に、明は頭が痛くなってきた。
反して全く未知の人間と、このシチュエーションに乗っかりたい衝動にも駆られ始める。
「……解ったよ。俺も君の勘とやらを信じるよ。これからよろしくな。
なんか後先逆になっちゃったけど、名前聞かせてくんない?自己紹介もしないとな」
「そっか。何にもまだだったね。」
一瞬目が有って、お互い顔を見合わせて笑った。
「僕は、渡瀬 怜(ワタセ レイ)。レイで良いよ」
名前を聞いた明は椅子からずり落ちた。
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