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ひとりの女が少女に歩み寄った。娼婦のルルーナである。長い髪の艶っぽい三十路女で、二人の子どもがいるから、大分優しげであった。 「あんた、名前は?」 「アルフィナ…」 少し安心したのか、小さな声だが少女は答えた。 「まぁ!八つ星(パ・バルツァ)の花星の名ね!すてきね!」 ルルーナは大袈裟にほめた。八つ星(パ・バルツァ)伝説にあやかって、同じ名をつける者は多い。アルフィナもそのひとつで、八つ星のひとり、"花咲く星"という意味の通称を縮めたものであったと伝わっている。 「父さんか母さんがつけてくれたの?」 「あの…これは…」少女の声が上擦った。大きなブラウンの瞳から、涙がみるみる溢れてくる。 「姉さんが考えてくれたって、おばあちゃん言ってた。やさしくて、大好きな姉さんなの…。なのに、あんな、こわい猿みたいなのを連れて…あの男……!」 眼前の店主すら気がつかない程度に、カウンターのキッドが目を細めた。 「あの男?男が姉さんをさらっていってしまったの」 "こわい猿みたいなの"という部分をルルーナは聞き逃した。ほとんどの客も、それについて何も感じていない。キッドだけがその言葉に、肩越しに見える少女への関心を強めた。少女自身も自分の言ったことをそう大したことだとは思っていない様子である。     
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