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「そう…そうです。ひとりで来たの、痩せっぽちで、出っ歯で、いやな感じの男の人でした…」 少女は、おそろしい記憶を必死に思い返し、時々身震いするほどに怯えながら、ゆっくりと語り出した。  アルフィナと名乗るそばかすの少女は、曰く、北東の村に姉と祖父母との四人で暮らしていた。母親はアルフィナを産んですぐに亡くなり、父親はさらに北へ行った町に出稼ぎに出ていて、年に一度も戻ってはこない。それでも家族は、たまに届く父親からの便りを楽しみに、そして同封される僅かな生活費を頼りに、少しの家畜と小さな畑とを守りながら、ささやかに幸せに暮らしていた。  その暖かな生活が奪われたのは、月の冴え冴えとした晩のことであったという。その晩、家族はいつも通り食卓の蝋燭にだけ火をともし、星の神に祈りを捧げて、和やかに談笑しながら夕飯を食べていた。  風の強い夜であった。ふと、家の戸を叩く音がした。こんな時間に家族を訪う者などめったになかったから、はじめ、家族は皆、風で枝でも飛ばされてきたのだろうと思い込んだ。すぐにそれが誤りであったと気がついたとき、戸を蹴破って上がり込んで来た侵入者は、不機嫌そうに唇をめくれ上がらせて歯ぎしりをしていた。     
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