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「きみの来る、ほんの少し前のことさ」
ブラウンの大きな瞳が更に大きく開かれた。驚愕に小さく口もあけて、少女はとなりのルルーナを見やった。
「本当よ」
ルルーナは少し躊躇を見せながら頷いた。
「でも、当然なんだよ。イカサマをしたのは向こうなんだから。勝負をしていたの、キッドとあの旅の野郎は。あいつはズルして、そのくせ負けて、無様にキッドを撃とうとした最低のクズ野郎さ」
少女は一生懸命に考えた。理由はどうあれ、この優し気に微笑んでいる青年は人殺し。信じられないけれど他の誰も反論しない。そう、銃を持っている男だもの。人を撃つことはあるはずだ。人を撃つための銃。あの左右の銃は、誰かを撃つための銃……。
アルフィナは、短い時間であったが真剣に考えていた。自分がどこに来たのかを思い出していた。姉を奪われた。助けを乞うために、役人に断られた後、この酒場に来ることを選んだのは彼女である。祖父母に頼まれたのではなく、少女が自ら、ここに来たのだ、それは何故か。
ゆっくりと深呼吸をして、少女はまた、ブラウンの瞳をキッドに戻した。
「……そう」
キッドがヘーゼル・グリーンの瞳を満足げに細めて頷いた。
「この銃は、人を撃つための銃」
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