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この人は、ひどく優しい口調で厳しいことを言う人。穏やかで、どこか遠く距離を感じる微笑だとアルフィナは思った。どうもこれ以上は問答にならない。子ども心にそう察して、アルフィナはもう一度だけ、死体の運ばれていった先に視線を投げた。もう出入口の扉は閉まっていた。  アルフィナは向き直って、またキッドの顔を見た。キッドもヘーゼル・グリーンの瞳を気持ち細めてアルフィナのそばかす顔を見返した。 「あの人、大きな猿みたいのを連れていたんです」 「侵入者の野郎?」 アルフィナは小さな顎を上下した。 「抵抗したんです、あたしたちだって。お金も動物たちもとられるわけいかないもの。おじいちゃんがいれば負けっこないって、あたしたちも最初はがんばったんです」 「おじいさんをずいぶん信頼している」 「おじいちゃんが負けるわけない」 誰かに言い聞かせるように、小さいが強い口調であった。 「おじいちゃん、昔お城で働いていた兵隊さんだったんです」 へぇ、と、少し驚くような顔をキッドが見せた。驚くと同時に、ほんのわずかばかり考えを巡らせて納得した、というような顔かもしれない。ただの借金取りのチンピラが魔獣など連れ歩けるはずはない。アルフィナにはわからない事情が裏にあるはずで、もしかすると、祖父の兵隊時代まで遡って事件は起こっている可能性もあった。 「城で何をしていた?」 「さぁ…。昔のことはあまり話さないから……」 その辺りの事情はアルフィナから探るのは難しそうだ。キッドは話題を魔獣に戻した。     
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