198人が本棚に入れています
本棚に追加
「そのおじいさんがかなわないぐらいの猿っていうのは」
「あの、猿かどうかもわからないんだけれど……」
「いいよ。わかることだけ」
余程恐ろしかったのだろう。それを思い出して人に聞かせるだけでも小さな肩が微かに震えた。少女の勇気がすり減りそうでルルーナは案じたが、アルフィナはキッドをまっすぐに見返している。
「とにかく真っ黒で大きくて、夜だったのもあってよく見えなかったけれど、ときどき後ろの足で立ち上がったのが見えました。手で家具を掴んだり壊したりしていて……」
「うわ。そりゃあ化け猿だ」
客のひとりが青ざめて言った。
「大きいってどのぐらい?」
「立ち上がった時は…おじさん」
目の前の店主をチラリと見上げた。店主の身長は成人男性として小さくない程度はある。少なくともキッドよりは高い。
「あなたぐらいはあったと思います。二匹いました。はじめは見えなかったけれど、あの人が姉さんの腕をつかもうとして、みんなでぶったから、あの人が怒って"おい!出番だ!"って」
「それで猿が入ってきた?」
キッドの問いかけにアルフィナが頷いた。
(さて、そんなことがあるかな……)
キッドは一口、酒を飲んだ。
最初のコメントを投稿しよう!