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「そのおじいさんがかなわないぐらいの猿っていうのは」 「あの、猿かどうかもわからないんだけれど……」 「いいよ。わかることだけ」 余程恐ろしかったのだろう。それを思い出して人に聞かせるだけでも小さな肩が微かに震えた。少女の勇気がすり減りそうでルルーナは案じたが、アルフィナはキッドをまっすぐに見返している。 「とにかく真っ黒で大きくて、夜だったのもあってよく見えなかったけれど、ときどき後ろの足で立ち上がったのが見えました。手で家具を掴んだり壊したりしていて……」 「うわ。そりゃあ化け猿だ」 客のひとりが青ざめて言った。 「大きいってどのぐらい?」 「立ち上がった時は…おじさん」 目の前の店主をチラリと見上げた。店主の身長は成人男性として小さくない程度はある。少なくともキッドよりは高い。 「あなたぐらいはあったと思います。二匹いました。はじめは見えなかったけれど、あの人が姉さんの腕をつかもうとして、みんなでぶったから、あの人が怒って"おい!出番だ!"って」 「それで猿が入ってきた?」 キッドの問いかけにアルフィナが頷いた。 (さて、そんなことがあるかな……) キッドは一口、酒を飲んだ。     
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