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 アルフィナの言うことが本当ならば、魔獣は男が指示するまで付近で待機していたということになる。無差別に生物を襲う凶暴性を以て知られている魔獣が、人間の指示に従って行動し、攻撃対象の判断をも人間に任せるとは、聞いたことがない。  魔獣がなんなのかは誰も知らないが、魔法とともに在る生物だという点では、人間を含むこの世界のどの生物ともかわらない。犬や馬と同様に人の助けになるのではないかと方法を探している研究者もあるらしいが、キッドはよく知らない。  魔獣に近い種として精霊がいる。区別は曖昧で、実際は同じなのではないかという学者もいたが、それについてもキッドは興味がなかった。いずれも他の生物に比して魔力が高く、そのために魔獣は凶暴性が高まり精霊は知性が高まったのだとする説もあるが、確たる証拠はない。  いずれにせよ人間より旧い歴史を持つ可能性のある、ほとんど神に近い生物であることは疑いがない。現にいずれも神として祀られた例もあるとキッドも昔、聞いた覚えがあった。 (そんな神がかりのものを人間が好き勝手できるとは思えないが……) 魔獣は荒ぶる神であり、鎮めるか討ち果たすものであった。政府も魔獣討伐には前向きで公儀討伐隊もあるし、民間でも魔獣討伐には報酬を出す場合が多い。それだけ実際の被害があるのだ。それを飼いならす?信じがたいことではあるが、少女が嘘をついているとは思えない。     
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