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あるいはアルフィナの勘違いではあるまいか。少女はかなり怯えている様子である。本人も言う通り夜のことで視界も悪かったろう。薄ぼんやりと見えた影を恐れるあまりに人外の化け物と思い込んでいることはないか。
周囲の大人たちのそんな表情に自信をなくしたのだろう。アルフィナが泣きそうなため息をついた。
「あぁ……。やっぱり信じられませんよね。あたしも自分で訳がわからないの。でもあれは人間じゃないんです。意味の分からない呻き声をあげて、人を襲うなんて……。首輪をつけられているのも見えました。人間だったら、そんなことないでしょ?」
出されたカップを両手で握りしめた。
「そんなの……信じてもらえないのはわかってます。だけど!だけど姉さんがさらわれてしまったのは本当なの!お願いします!本当に少しだけれどお礼もしますから……」
「あぁ。大丈夫。落ち着いて」
少女の切実な様子に気圧されて、キッドが片手を挙げて宥めた。まだ正式に姉の救出を引き受けてはいなかったが、断りづらくなったな、と思う。
「魔獣についてはもっと調べなくっちゃならない。人間に使われるなんて聞いたことがないし、おれひとりで手に負えたものかわからない」
「そう、ですよね。でも姉さんが…遅くなったら……」
「その下衆野郎はさ、姉さんを連れて行くときに何か言ったかい?どこぞに売り飛ばしてやろうとか、いくら持ってこないとどうとか」
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