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 手配書はアルフィナも無論確認してある。"役所のおじさん"は手配されている人物について"賞金稼ぎが追う価値もない程の安い賞金"と言っただけで他は何も教えてくれなかったが、こうして紙に書いてあるのだからとアルフィナも追及はしなかった。この時、純粋なアルフィナは少しの疑いもなく白髭の男を信じていた。賞金首だろうとなんだろうと、危険な町だろうとどこだろうと、家族を助けてくれるのならば会いに行かなければと決心していた。必死に探した馬車の持ち主は"お嬢さんが行くような町じゃないよ"と繰り返し注意してくれたが、アルフィナは引かなかった。恐ろしかったが勇気を失くさないようにと、縋るような思いで手配書を確認したのだ。 「ここにいるって、この"払暁のガンマン"って人ですか?」 「えぇ。別名"ノーバディ・キッド"ね。恥ずかしい名前よね」 「ど、どの人ですか?あの、お願いします!どなたですか?」 店内をぐるり見回したが、誰も名乗り出ない。ニヤニヤと笑うばかりで、それらしい人物は見当たらなかった。  アルフィナは手配書の内容を思い出して似ている人間を探そうとした。手配されているのは男で、名前も歳もわからない。背は高く、肩幅広く、かなり大柄な人物。黄金色の髪と瞳、そして同じく金の銃が夜明けの空のようであることから"払暁"と仮称されているということであった。  ひとり、ボサボサの金髪を帽子に隠した無精ひげの男が窓際に座っている。目はブラウンに見えたが背は高そうだ。目が合った。 「あなたですか?」 すかさずアルフィナは問うた。男は笑って手を振る。 「残念。俺は確かに似合わず"キッド"だが"花咲か小僧(ブルーミング・キッド)"ってあだ名」 「酒を飲みすぎていっつも鼻が真っ赤に咲いてる」 同じテーブルの男が下品に笑いながら解説をした。 「それじゃ、あなた?それとも、そっちの?違う?」     
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